SfN2009雑感


 シカゴでのSociety for Neuroscienceに行ってきた。毎年世界中から3万人ぐらいが集まる神経科学のお祭りみたいな学会。学会そのものと、そこで触れた考えについての雑感。メモ。


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 Clay Reidラボは相変わらずすごい。もうあの辺で出来ることは全部やってやろうという勢いを感じる。Reidさんとは興味に共通する部分もあって、いつか自分でもあの辺の仕事をやってみたいと思っていた。でも今年の勢いを見て、もうあの辺は彼らに任せて自分は全く別のアプローチを取った方が良いと思うようになった。彼らのこれまでの経験の蓄積、今後も継続して得られるであろう莫大な研究費、世界中から集められるポスドクの質と量、どの面で考えても他の追随は相当難しい段階に来ていると思う。何はともあれまずまとまったお金が必要な種類の研究で、ああいうラボがあるとちょっと側抑制がかかる気がする(必ずしも悪いことではないけど)。


 あのラボに参加希望してみる、という選択肢はある。(という話を元同僚としたら「それはなんか負けた気がして嫌だ」と言われた。彼は何と戦っているのだ)


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 しかし考えてみると、自分が今やっている研究も(もし仮にそういう日が来たとして)若手研究者が独立した当初に得られそうな研究費をはるかに越えた額を使っている。ボスの元で今のままやっていく分にはお金を気にせずにいられるけど、独立した途端に何かを縮小しないと行けない。そういうことにもある程度は自覚的である必要があると思った。


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 学部のときに日本でお世話になった助手(現在は准教授)の先生と偶然出会ってお茶をご一緒した。日本に帰る気が少しでもあるなら、とにかく偉い先生に積極的に話をしに行って、こういう奴がここにいるということを印象づける努力を必死でやれ、もちろん日本の神経科学学会にも毎年参加しろ、との助言を頂く。正直なところ仕事をさせてもらえるところがあれば日本でもアメリカでもヨーロッパでもどこでも良いと思っているのだけど、日本という選択肢を考えるならそういうことも必要なのか。来年は日本の学会にも行こうかと思う。


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 新しい種類の研究を始めるため、初回だけguest surgeonに来てもらうことになった。シカゴで初めて顔合わせをしたら予想に反してとてもメロウな感じの人だった。当該手法の開発から関わった第一人者で世界中で手術をしまくっていると聞いて、何かちょっと怖い人のような先入観があったけど、そういうものでもないらしい。


 旅費と滞在費だけ出せば謝礼等は要らないとのこと。良い人すぎてちょっとわけが判らない。腕をなまらせないために数をこなしたいのか。あるいは我々の基礎研究がいつか臨床応用に還元される日が来ると信じているのか。とりあえず失礼のないように迎える側の準備には万全を期したい。


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 自分の発表は、来てくれた人には概ね好評だったと思う。fMRIの発表をするのは初めてで、スピンとかについて聞かれたらどうしようと思っていたけど、そういう質問はなくてちょっと安心した(いや本当は何でも答えられないと行けないのだろうけど)。来てくれなかった元同僚に後で話をしたら「fMRIを使った仕事は全て等しく無価値だ」的なことを言われた。まあまあ。


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 シカゴは思っていたよりも寒くなく、結構きれいで良い街だった。また行きたい。