BCIの脳に対する影響?
Wired Vision にこんな記事が。どう捉えて良いのかよく判らない記事だけどメモ。
「脳で操作するゲーム」が登場、危惧の声も
Emmet Cole 2007年09月11日
頭で考えるだけでコンピューターを操作できる「ブレイン=コンピューター・インターフェース」(BCI)を使ったデバイスのメーカー数社によると、BCI技術は2008年にも、医療分野から消費者向けゲーム市場へ進出を果たせる状態にあるという。
2008年にはゲーム会社からBCI対応ゲームが本当に発売されるかもしれない。だがその一方で、多くの研究者が、ユーザーの脳に悪影響が及ぶことを心配している。
たとえば、BCIデバイスは時としてユーザーの脳波を遅くすることがある。その後、注意を集中させるのに困難を感じたというユーザーの報告もある。
「脳波を遅くする(原文:slow down their brain waves)」という表現にちょっとひっかかりを覚えるのだけど、これは低周波成分が強くなるという理解で良いんだろうか。記事中に登場する Niels Birbaumer さんを PubMed で調べてみたら
Brain-computer interfaces for communication and control.
Wolpaw JR, Birbaumer N, McFarland DJ, Pfurtscheller G, Vaughan TM.
Clin Neurophysiol. 2002 Jun;113(6):767-91.
(BCIのレビュー)
A multimodal brain-based feedback and communication system.
Hinterberger T, Neumann N, Pham M, Kübler A, Grether A, Hofmayer N, Wilhelm B, Flor H, Birbaumer N.
Exp Brain Res. 2004 Feb;154(4):521-6. Epub 2003 Nov 29.
(視覚と聴覚フィードバックを試して訓練成績を比較するなど。聴覚は視覚に比べて訓練成績が悪い。)
などが見つかって、SCP (slow cortical potential) というEEGで得られる信号を用いてBCIを作ろうとしている人らしい。この人の研究の中で、SCPをフィードバックして実験をした後に注意の不調を訴えた人がいるということなのかな?
でもそれはEEGのどの信号を見るかによるだろうし、
Emotiv社の最高経営責任者(CEO)であるNam Do氏は、同社の技術の詳細を説明することは控えたが、それがニューロ・フィードバックを用いたものであることは否定した。
とあるのでよく判らない。でも何らかのフィードバックはあるはず(というかそうじゃないとゲームにならないし)。運動に関連しない脳活動が物理的な現象としてフィードバックされるという経験はほとんどの人はしたことがないはずで、そういう意味では何が起こるのか判らない恐さはある・・・かも?
研究者がBCIを扱うときには厳密なプロトコル*1にそってやっているわけで、同様の技術をどんな人がどういう状態で使用するか判らないゲームデバイスとして世に出すのは(少なくとも現時点では)ちょっと恐いと感じるというのは理解できる。研究で相手にするのは比較的少人数(たぶん多くても数十人)なのに対して、ゲームとして売り出されたらいきなり数万人かそれ以上の単位の人が関わるのだろうし。そういう不特定の大人数に対する影響のデータを持っている人は誰もいないわけで、まあ恐いかな。新しいことは何でもそうなんだろうけど。
「急性Wii炎」というのが話題になったけど、ゲームだとやりすぎる人が出てしまうのかも。特に子どもとか。
-
-
- -
-
でもたぶんこれが普及したときには、何か悪いことがあったらBCIの影響だと訴える人が出てくるのだろう。それが本当にBCI特異的なことかどうかとは関係なく。それは真面目に医療目的でBCIを研究している人にとっては本当に憂慮すべきことかも知れない。
ただ普通に被験者を募って研究をするのに比べて数千倍以上の事例が集まる可能性があるわけで、それを何らかの形で利用できるならこれまでとは質的に違った知見が得られるかも?*2
-
-
- -
-
ところでこういうこれまでとは異なる脳の使い方に熟練して、その結果これまでとは違う何らかの性質が現れた場合、それは単に病気とかそれに類するものとみなされるのだろうか?