並列処理時代の演算の一意性

足し算の答えが一意に決まるなんて昔話になるかも、というお話。 確認した範囲では、MATLAB 7.8 (2009a, 64bit) に足し算をさせる(たとえばサイズが500,000x1の行列の各要素を全部足す)と、その答えは一意に決まらない。全く同一のデータについて同じPC・…

最初の言葉

多くの言語圏で母親を表す言葉はなぜか共通して「ママ(mama, mamma)」かそれに類するもので、また赤ちゃんがしゃべる最初の言葉も多くの場合「ママ」だと言われている。Caltech出身の院生が紹介してくれた説によると、これらの不思議な(?)一致の原因は…

Peer Review 1945

今日の動画。 Open access journal...

(外から見た)事業仕分け雑感

日本では「事業仕分け」という名のもとで研究予算等の縮小・再編が行われているらしい。公開された議論を聞いていると、質問者・回答者の双方に準備不足の面があるようには感じるけれど、枠組みとしてはこういう議論の場が出来たことは良いことだと思う。 た…

SfN2009雑感

シカゴでのSociety for Neuroscienceに行ってきた。毎年世界中から3万人ぐらいが集まる神経科学のお祭りみたいな学会。学会そのものと、そこで触れた考えについての雑感。メモ。 === Clay Reidラボは相変わらずすごい。もうあの辺で出来ることは全部やってや…

構造モデルと意味モデルと事前情報を用いて視覚経験を「再構成」

Gallantラボの自然画像デコーディング論文第2弾。前回のカードトリック論文(Kay et al. 2008)(fMRIで記録された脳活動を解析することで、任意の120枚の自然画像のうち被験者がどれを見ていたかを当てる。)をさらに推し進めて、もう少し視覚経験の「再構成」…

遺伝子治療で色覚異常を治す

Gene therapy for red–green colour blindness in adult primates Katherine Mancuso, William W. Hauswirth, Qiuhong Li, Thomas B. Connor, James A. Kuchenbecker, Matthew C. Mauck, Jay Neitz & Maureen Neitz Nature Advance online publication 16 Se…

オープンソースカメラ

デジタルカメラ・ビデオにLinuxを積んで、撮影制御や画像処理を全部オープンソースでやってしまおうという話があるらしい。スタンフォードの院生を中心としたプロジェクト。 (Open-source camera could revolutionize digital photography Stanford Universi…

はいはいする双子

うちの子の定期検診に小児科医院に行ったところ、1歳過ぎの双子の赤ちゃんとそのお母さんが来ていた。双子はもう相当にはいはいの達人になっていて、お母さんがちょっと早足で歩かないと捕まらないぐらいの速度で動き回っていた。 問題は、たまに彼らが互い…

科学者とマスメディア

今日の漫画。SMBCより。 あるあ・・・る? 以下雑感。 科学者が常態として行っている対話は(1)文脈をほぼ完全に共有した同業者と(2)特定の事象それ自体についての理解を深めるべく行うものであって、科学者はこの種類の対話に関して膨大な訓練を受けてい…

3次元手ぶれ補正(知覚補正付き)

(ちょっと遅ればせながら)今年のSIGGRAPHで発表された手ぶれ補正アルゴリズムは面白いと思った。素人が撮ったぶれぶれのビデオを後からソフトウェア的に修正してくれるというもの。ウィスコンシン大学とアドビ社の共同研究。 Content-Preserving Warps for…

赤池氏永眠

AIC(赤池情報量規準)の赤池弘次さんが亡くなったらしい。享年81歳。日本人の名を冠した業績で、これほどよく利用されているものを他に知らない。 ちょうどラボに遊びに来ていた統計の院生(イスラエル人)がAICを使ってL0ペナルティの実装云々という話をし…

animate / inanimate

高次視覚野細胞の反応を調べるに、モノを見たときに脳が一番気にしているのはそれがanimateかinanimateかということらしい*1。つまり、生き物(とくに動物)かそうでないか。 同僚(英語話者)と昼ご飯を食べていたらその話になったので、そういえば日本語で…

レーザーディスプレイ

三菱がレーザーディスプレイを出したらしい。 (Mitsubishi Electric LaserVue) レーザーなので綺麗に単波長(上が LaserVue で下が普通の LCD)。 (HDGuruより) 色の研究をするときには、こういうデバイスを使えたらややこしい補正をしなくて済んで良いかも…

「I Have A Dream」から「Yes, We Can」へ

大統領選が終わった。 選挙の経過を伝えるニュースを見ていたら、太平洋沿岸州での投票が締め切られる午後8時(現地時間)に向けてカウントダウンが始まった。アナウンサーが「私達はあと少しで歴史的な瞬間を迎えることになるかもしれません」と言い、投票…

Slow Feature Analysis

神経系を模した教師なし学習の枠組みとして、Slow Feature Analysis (SFA) というのがあるらしい。これかなり良い感じなんじゃないだろうか。 感覚神経系の役割は、生存に合目的な行動を行えるように外界の状況を推定することにある。感覚器から得られる生の…

MacBook

ついに思い立って近くの Apple Stpre で MacBook を買った。個人所有としては初めての Mac。 シンプルなアルミニウム筐体が良い感じ。数日使ってみた感想: マルチタッチ・トラックパッドは良いアイデアだと思う。指の本数によって違う操作ができる。一本指…

シングルピクセルカメラ

単一ピクセルのカメラで安価・効率的なイメージングをしようとしている人がいるらしい。 Compressive Imaging: A New Single Pixel Camera Kelly Lab, Compressive Sensing Group, Rice University (上記ページより) どうやって単一ピクセルでカメラになる…

10月

10月。もう10月。 - 日本食を食べに行ったら、レシートと一緒に渡されるお口直しとしてビスコが出てきた。とても懐かしい味。しかし「おいしくてつよくなる」って見事に途中で主語が入れ替わっている。これを許容する日本語というのは奥深いよな、と思う…

コピーキャット

日本語では真似をする動物はサル(「猿真似」)ということになっているけれど、英語ではネコ(「copycat crime(模倣犯)」など)ということになっているらしい。ネコってそんなに真似するのか? と思っていたけれど、こういうビデオを見るとたしかに copyca…

マインドリーディングで終身刑

インドの法廷で、EEG を応用した嘘発見器による「証拠」を元に終身刑を宣告された人がいるらしい。 India's use of brain scans in courts dismays critics By Anand Giridharadas Herald Tribune September 15, 2008 元 NIMH (米国国立精神衛生研究所)にい…

フラッシュ有/無の2枚の写真から3次元再構成

また面白いことをやっている人が。凹凸のある壁面等について、同じ場面の写真を2枚撮る(1枚はフラッシュ有り、もう1枚は無し。)だけで3次元再構成が出来るという話。 Capturing 3D Surfaces Simply With a Flash Camera Wednesday, August 27, 2008 - …

並列化メモ

コンピュータサイエンス研究科で並列コンピューティングのセミナーがあるというので聞きに行く(ほとんど現実逃避)。印象に残った話をメモ。 自分の書くプログラムが2008年以降高速にならなくても良いという人を除き、全ての人は並列化プログラムを書く必要…

ストリートビューから3次元マップ

Googleマップ・ストリートビュー的なデータから街の3次元マップが作れそうだと思っていたら、もうやっている人がいた。メモ。 やっているのはearthmine社というカリフォルニア州・バークレーにある企業。NASAのJPL(ジェット推進研究所)から出てきた技術(…

xで根本的な発見はn個しかない。

神経科学の歴史の中で、根本的な発見は4つしかない。あとの研究は場所を変えたか手法を洗練させたものに過ぎない。 と言っている人がいた。4つが何だったかは忘れた。*1 「根本的な発見」というのはかなり定義がしにくいので、逆にこれはほとんど何にでも…

神経科学と安全保障

DARPA(米国防高等研究計画局)による神経科学関連の研究計画と、それに関連する話題をまとめた記事を見つけたのでメモ。 Neuroscience, National Security & the "War on Terror" Tom Burghardt Global Research, July 29, 2008 思ったこと: ちょっと神経…

fMRI 雑感

被験者ばっかりしているのもあれなので、自分でも fMRI 実験を設計して予備テストをしてみた。今日解析をしてみたら、予想外に解析結果の S/N 比が良くてびっくりした。全然結果が出なくても仕方がないと思っていたぐらいに野心的な実験だったのだけど、これ…

I Survived A Japanese Game Show

カナダ滞在中にたまたまテレビで見た「I Survived A Japanese Game Show」というリアリティ番組(アメリカ ABC 配信)が興味深かった。基本的な作りは通常のリアリティ番組と同じで、一般参加者が様々な試練を受け、最後に残った勝者が豪華賞金・特典を得る…

バンクーバーでビザ更新

ビザ更新(J1とJ2。visiting scholar とその家族。)のためにしばらくカナダ・バンクーバーに行っていた。 現在のところアメリカ滞在のビザ申請・延長をするにはアメリカ国外にある大使館・総領事館に出向いて面接を受けないといけない。このため長期滞在中…

グリア細胞の刺激選択性・BOLD信号との関係性

去年の SfN で一際印象に残った話が Science に。 Tuned responses of astrocytes and their influence on hemodynamic signals in the visual cortex. Schummers J, Yu H, Sur M. Science. 2008 Jun 20;320(5883):1638-43. V1 のグリア細胞(astrocyte)の…