グリア細胞の刺激選択性・BOLD信号との関係性


 去年の SfN で一際印象に残った話が Science に。


Tuned responses of astrocytes and their influence on hemodynamic signals in the visual cortex.
Schummers J, Yu H, Sur M.
Science. 2008 Jun 20;320(5883):1638-43.


 V1 のグリア細胞(astrocyte)の刺激選択性をカルシウムイメージングで調べたら、近隣の神経細胞と類似の受容野や方位選択性を持つことがわかったと。方位選択性は神経細胞よりも鋭いとか。グリア細胞の活動を抑える薬をかけたら神経細胞の活動(少なくともカルシウム応答)は振幅・持続時間ともに増加したとのこと。


 これどのぐらい情報処理に積極的な関わりを持っているのだろう。続報に期待。


 あと内因性 optical imaging (本来は固有の歴史を持つ技術だけど、最近は BOLD 信号の細かいやつみたいな扱いになっているような気がする。)をやったらグリア細胞の活動を抑えたときに信号が見えなくなった。つまり fMRI で見ている信号はグリア細胞の活動なのかも、と。この辺は、BOLD 信号は代謝活動を見ている(そしてグリア細胞神経細胞に栄養補給をしている)という教科書的な知見とも合致するのかな? 今回の V1 での実験では神経細胞とその近傍のグリア細胞の反応特性はよく似ているという話だったけど、もし両者の活動が異なる例が見つかるのなら BOLD 信号の意味づけにもまた新しい視点が付け加わるのかも。


 「注意」との関連なんかを調べたら面白そうだけど、まだ注意が調べられる系でカルシウムイメージングは出来ないか・・・。