animate / inanimate
高次視覚野細胞の反応を調べるに、モノを見たときに脳が一番気にしているのはそれがanimateかinanimateかということらしい*1。つまり、生き物(とくに動物)かそうでないか。
同僚(英語話者)と昼ご飯を食べていたらその話になったので、そういえば日本語ではanimate/inanimateは非常に重要な区分で、言及する対象がどちらであるか判断してからでないとうまく文が作れないんだよね、と言うとちょっと面白がられた。
つまり、beとかexistに相当する動詞として「ある」と「いる」があって、どちらを使うかは言及する対象が生き物なのかどうか、もっと言うと話者が生き物だと思っているかどうかによって決まる。面白いことにその中間はないので、日本語話者は常に「これは生き物なのか?」というちょっと哲学的な問いに答えることを強要されていることになる。英語ではニュートラルに「There is a robot.」と言えるけど、日本語では「ロボットがいる」と言うか「ロボットがある」と言うしかない*2。そこには既に暗黙の判断が含まれている。
文法や単語の用法レベルで弁別を強要されるぐらい重要(?)なカテゴリー、という絞りをかければ、認知機能を研究するときにどういう刺激セットを使うべきかについてのヒントが得られるかもしれない。他にあまり例が思い浮かばないけど、英語だと単数か複数か、等々。
ASIMOは、いるだろうか、あるだろうか。細菌はいる。ウイルスはいる(?)。草花はある。単離神経細胞はある。脳みそはある。赤ちゃんはいる。胎児はいる。受精卵はある(?)。卵子はある。精子はある(?)。死体はある。ゾンビはいる。脳死した子どもは、あることになったらしい。
*1:Matching categorical object representations in inferior temporal cortex of man and monkey. Kriegeskorte et al. Neuron 2008 Dec 26;60(6):1126-41.