10月


 10月。もう10月。

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 日本食を食べに行ったら、レシートと一緒に渡されるお口直しとしてビスコが出てきた。とても懐かしい味。しかし「おいしくてつよくなる」って見事に途中で主語が入れ替わっている。これを許容する日本語というのは奥深いよな、と思う。あるいは、これを許容する日本語という体系でも、主語・述語というパターン分けがより重要な位置を占める英語という体系でも、とにかくその体系の中に漬け込んだらどちらにも適応できる脳というものは奥深いよな、と思う*1 *2


 ・・・などと感慨にふけっていたら、ポーランド人の友人に「これは日本のお菓子なのに、なぜパッケージには西洋人の子どもの顔が描かれているのか?」とつっこまれた。言われてみれば確かにこれは日本人の子どもの顔ではないかも。


http://www.ezaki-glico.net/bisco/img/0807pacRed.jpg

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 ボスの NIH グラント書きの手伝いもようやく目処が付いた。というよりも、締め切りまであと30時間ぐらいなのでもうこれで良いことにした。手伝いをすること自体は勉強にもなるし良いのだけれど、もう少し早めに着手するという習慣をつけてほしいと思う。毎回最後のほうは(主にボスの)テンションがおかしくなる。


 今は25ページみっちり書ける(書かされる)このグラントも、数年後には10ページ強まで枚数を減らされるという話。NIH (R01)グラントはアメリカの(生命)科学の根幹を支えると言っても良いグラントで、この様式変更は今後の科学のあり方に少なからぬ影響を与えそう。ボスの予想としては、細かい計画を書けなくなることで、相対的に計画内容そのものよりも業績(つまり論文数)に対する評価の割合が高くなる。それによって新米教授がお金を得ることがますます難しくなるだろう、とのこと。それは困る。

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 EEG の実験を(も)することになった。細胞→fMRIEEGと、思えば遠くに来たものだという気もするけれど、新しい種類の実験を始める時はいつもわくわくする。といっても当面の役割は院生のお目付け役(研究の枠組み提供+はまった時の手助け)ということで、楽なようなはがゆいような立ち位置。


 最近少し応用ということについて考えている。埋め込み電極を使った応用は、当面は非常に範囲が限られたものになると思う。「一家に一台 fMRI」という時代もしばらくは来ないはず。そう考えていくと、神経科学の知見を何らかの形で応用するための普及型デバイスとしては、現実的には EEG がぎりぎりかな、と思う*3。ちょっと調べた限りでは(↓)ポテンシャルとしては誤差7ミリ(parafoveal な V1 視野再現マップで視野角3度以下)ぐらいの精度で情報が得られるらしい。それだけの精度があれば、応用としてはいろいろ出来そうな気がしてくる。


Spatial resolution of EEG cortical source imaging revealed by localization of retinotopic organization in human primary visual cortex
Chang-Hwan Ima, Arvind Gururajana, Nanyin Zhangb, Wei Chenb and Bin He
J Neurosci Methods. 2007 Mar 30;161(1):142-54.


 とりあえず細胞→fMRIでうまく行ったパラダイムで実験してパイロットデータを取ったので、あとは解析・・・というか院生の解析待ち。はがゆい。


 

*1:あるいは知らないだけで本当は「おいしくてつよくなる」的な英語表現もあったりするのだろうか。

*2:適応できるというのは主に赤ちゃんの話。大人になると・・・。

*3:できれば頭がぬるぬるしないやつが良い。