5月半ば


 統計・機械学習をやっているラボとの共同研究が良い感じになってきたので、最近はその系統の論文をちょこちょこと読んでいる。気付いたのは、わりと基本的に思えるような技術でも最近になってやっと研究が進んできたようなものが結構あること。コンピュータの性能が飛躍的に向上したおかげで、一昔前には実用上現実的でなかった事柄がどんどん出来るようになり、理論の上で素直な実装がそのまま出来るようになったと。それで実際にやってみたら新しく判ったことがあって、そこから更に改良して・・・という流れがリアルタイムで起きているらしい。


 確かに、10GB 単位のメモリが使える今と 640KB で四苦八苦していた時代とは質的に違う部分がある気がする。計算速度の点でも最近の Quad-core のチップは 80GFlops ぐらいというので、30KFlops の 80286 時代と比べると6桁ほど速くなっている。1000年かかっていた計算が一晩で終わるなら、出来ることは増える。コンピュテーションの進歩は科学を変える。


 でも今扱っている実験データを論文に書いてある通りの解析にかけようと思ったら、メモリが 9TB ほど必要なことに気付いた。まだもうちょっと進歩が必要らしい。


 というわけでチップメーカーやエンドユーザーのみなさんは「これ以上の性能は要らない」なんて言わずに、これからもどんどんコンピュテーションが速くて安くなるよう性能の良いコンピュータを求め続けて欲しい。やっぱりこれからのビジネスには動画をフルに使ったプレゼンが不可欠ですよね。もちろん刻一刻と変わるビジネスシーンに対応するため、全てのプレゼンは3次元画像をリアルタイムレンダリング、しかも違いの判る大人としては HD画質でのラジオシティレンダリング動画を 80 fps で表示するのが基本ですよね。また不慮のネット切断に備えるため、Google のデータベースは全て自分のラップトップ PC のメモリにキャッシュ、自動翻訳した上での全文検索は 0.1 秒以内に終わらないとアドリブが効かない負け組ですよね。わかります。


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 新しい Assistant Professor のトークがあるというので聞きに行ったら、某ノーベル賞受賞者D氏も聞きに来ていた。しかも隣に座ったので何か無意味に緊張した。トークの前半はわりと硬めの話でD氏も結構質問をしたりしていたのだけど、後半はリベットさん的な実験の話になった。それは良いのだけどその辺りからなぜかデータ解析の質が格段に下がり(たぶん前半とは実働部隊のポスドク・院生が異なる?)、あれ?と思っていたら、D氏もだんだん不機嫌な様子になってきて、あげくの果てにトークの途中で退席して帰ってしまった。恐い。恐すぎる。自分のトークであんなことをされたらたぶん帰って家で泣く。