ノーベル賞をとった唯一の心理学者の話

"ノーベル賞をとった唯一の心理学者"こと Daniel Kahnemanさん(2002年経済学賞)のトークがあるというので聞きに行く。

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c8/Daniel_KAHNEMAN.jpg

 Decision making に関する経済学が専門ということなので何か参考になる話が聞けるかな、と思ったけれど、結論から言えば (1) 話がgeneral過ぎ、(2) 英語が聞き取りにくかった、ということであまり何も得られなかった。まあ72歳のノーベル賞受賞者トークというのはこんなものか・・・。


 一応把握した限りの内容を要約。人が何かを「計算」するには intuitionreasoning という2つのシステムがあって、それぞれ

intuition reasoning ex.
fast slow 顔を見て怒っていると判断する vs. 17x24を計算する。
automatic controlled 顔を見て怒っているかどうかを判断するかどうかを決めることは出来ない (automatic) が、17x24を計算するかどうかは自分で決めることが出来る (controlled)。
slow-learning flexible Politically incorrect なことを言わないようにするには時間がかかる。(ついladyとかgirlとか言ってしまう。womanと言いましょう。)

などの特徴がある。通常は2つのシステムの "associative coherence" が判断あるいは行動につながっている、というのが彼の主張(例としてStroop effectとかSize consistencyとか)。"associative coherence"って実態は何? という話はナシ。(ああもしかしてここで実態は何?とかいうのは神経科学な人だけなのか?)


 どうも話を聞いていても何をしている(した)人なのかよく判らなかったので、あとで調べたら

 従来の経済理論というのは、人は経済行動の際に合理的に振舞うという前提で理論が組み立てられていたそうです。(それはそうだと思います。) ところが、カーネマン教授は「人は不確実な状況下では合理的な判断をするとは限らない」ということを実験的に示し、さらにそれに基いた理論を提唱されているのだそうです。

http://www.lcv.ne.jp/~hhase/memo/m06_07b.html より引用)

ということらしい。こっちの話をしてくれたほうが面白かったのに・・・。


 余談。この「不確実な状況下では合理的な判断をするとは限らない」のは何故かという部分をトークの枠組みで考えると、可能性としては

  1. 「合理的に」確率分布や期待値を計算できるようになったのは生物史上ごく最近であり、より古い(であろう) intuition システムはそこまで賢い判断が出来ない(から時に「合理的」でない)。
  2. 「合理的な」判断からのbias(prior knowledge?)には適応上の意味がある。

ということが考えられるけどどっちなんだろう。あるいは制限時間内に答えを得るために正確さは二の次、ということだろうか。


 更に余談。この人の奥さんは心理学者 Ann Treisman。確かに上の問題の切り分け方なんかに(どっちからどっちかは知らないけど)影響を感じる。


 まあそういう人がいるんだな、ということで勉強になった。