科学は金を稼いでからやれという話


 久々に電車を使った。駅で電車を待っているとおじさんが道を聞いてきたので答えた。行き先が同じだったので同じ電車に乗ってちょっと話をした。


 日本から来ていて、○○(勤務先)で働いている、と言うと、


「ほお、それは優秀なことだ。でも大学院を出てから直接大学で働いているって? それはあんまり賢い選択とは言えないなあ。だって大学なんて薄給だと決まってるし、研究費をもらうのにも余計な仕事をしないと行けないんだろう*1? 豊かな生活も出来ないで延々と余計な仕事をする、なんて幸せじゃないだろう? 本当に科学を楽しもうと思ったら、まず自分の生活と研究を支えるぐらいの財産を作るべきだ。それから科学だ。そうしたら人生を楽しみながら、余計な仕事からも解放されて好きな研究が出来るじゃないか」


ということを言われる。それなんて Jeff Hawkins 、っていうか、なんで初対面のアメリカ人とこんな話をしてるんだろうと思いながらも、まあ一理はあるとも思った。


 どのぐらい現実的な話なのか。企業に行った友人の話を聞くと、今稼いでいる額の数倍稼ぐのは条件が合えばそう難しいことではないようだ*2。でも、まあその程度だ。自前で研究所を作ってストックで回すまでの財産を作るにはまたいくつか違うステップか必要で、それがどのぐらい難しいのかは全然判らない。たぶんとても難しい。特に基礎研究だと研究による直接の収益はほとんど望めないので、スタート時に一生分の研究費が必要とすると・・・どのぐらいなんだろう? 基礎研究者の平均生涯研究費? 数十億円あればとりあえず安泰?


 ガリレオの昔から職業科学者全盛の現代に至るまで、科学というのはなんとなくパトロン(王侯だったり政府だったり。)についてやるものだと思っていた。アメリカにはそう思わない人もいるのか。そりゃあまあ雇われシェフよりオーナーシェフの方が気分は良いだろうけど、この料理は半端でなく金がかかるからなあ。


 

*1:ラボ持ちボスの仕事の相当部分は金策に費やされる。

*2:逆に言うと今の稼ぎは同級生の収入のn分の1ということ。