生き物としての雑感
秋には子どもが生まれるという同僚と話していて思ったこと。
アメリカにおける科学者の、わりとうまく行った場合のキャリアパスはこんな感じだと思う:20歳代後半で博士号を取り、ポスドク(Postdoctral fellow)として各地の研究室を渡り歩きながら経験と業績を積む。30歳代のいつかの時点で Assistant Professor として自分のラボを立ち上げる。40歳前後のいつかの時点で R01 グラントを当てて更に業績を積み、テニュア(終身雇用権)を獲得する。
ポスドクの給料というのはだいたい日本円で年に400万円〜550万円ぐらい*1で、ほとんどの科学者は少なくとも20歳代後半から30歳代のいつかの時点までこの給料で過ごすことになる。これは一人で生きていくには十分、夫婦2人でもまあなんとか。でも子どもが1人いると結構ギリギリで、著名な大学・研究機関のあるアメリカ大都市部で生きていくには貯金の切り崩しを考える額。
うちの場合は妻が自分と同程度に稼いでくる*2ので、今のところお金に困るということはない。でも子どもが出来て妻(もしくは自分)が仕事を辞めるか中断すると、上述の通り困ることになる。安定して相応の収入が得られるまで子どもを待つとすると、加齢とともに危険度が増して行く。
そういう道を好んで選んできたわけで、何か格別に不満があるわけではない。分野内での移動はあり得るにしても、神経科学はずっとやり続けるかいのある仕事だと思う。ただ、相当にうまくやっても、科学者を目指す限りは自分達の世代の人口を再生産する(つまり子どもを2人以上育てる)のも結構厳しいという現実については、残念だな、と思う。