科学、理科、学問


 「研究者をやってます」「神経科学をやってます」――非研究者の人に向かって自己紹介をする時に、上手く話がかみ合わないことがあるなあと思っていた。そこから薄々は気づいていたのだけれど、どうもこちらが思っている以上に「科学」という営みは一般に理解されていないらしい。あるいはみんな自分の知っていることの範囲で理解しようとしている。


 以下、遭遇した誤解パターン:


文系的誤解(暫定カテゴリー)

 科学、あるいは学問というのは主に本を読んで調べ物をすることだと思っている。イメージとしては社会科の調べ物とか、大学のレポートとか。「〜さんはこう言っていました。一方〜さんはこう言っていました。私は〜だと思いました。」というのをまとめたら今日の仕事はおしまい。


理系的誤解(暫定カテゴリー)

 科学とは、中学・高校の理科実験みたいなものだと思っている。イメージとしては白衣を着て試験管を振ったりしている。実験の手順は全て教科書に書いてあり、教科書に書いてある通りの物質(?)が出来るとか分析が出来たら今日の仕事はおしまい。


 つまり、科学は基本的に(彼らも経験のある)「勉強」、あるいは何らかの作業といった範囲の知的活動と捉えられていて、「研究」、つまり前人未到の全く新しい知見を得ようとする試み、といった側面、というか本質は直感として理解されていない。


 だから「え? 誰も成功したことのないことをしてるの?」とか「大学で働いてるの? ふーん。でも世の中そんなに教科書通りじゃないんだよ」等の見当違いなことを言われたりする。主婦から経営者、医者に至るまで、研究経験のない人達―その全てとは言わないけれど、結構多くの人達―のイメージはこういうものらしい。


 知っていることの範囲で把握しようとする、というのは自然なことだと思う。わが身を振り返っても、そうやって誤解していることは山ほどあるだろう。

 ではどう説明したらいいのか。一般的なイメージの中では「発明家」ぐらいが実際の科学でやっていることに近いのだろうか(まだだいぶ違うけど)。でも発明家が普段何をやっているのか、というイメージも沸かないだろうから、あまりやっていることの説明にはならないか。まあ(時間が許せば)ゆっくり説明するしかないのかな。あるいは科学教育がんばれ、というところか。


追記:関連(?)リンク
Normal people vs. scientists