科学者と政治家の距離感
所属している北米神経科学学会の事務局からたまにメールが届く。先日のメールの題名は
THANK YOUR REPRESENTATIVES: House Passes NSF Spending Bill
あなたの代議士にお礼を言いましょう:下院がNSF(全米科学財団)の予算を承認しました。
NSF(あえて役割で当てはめるなら日本でいう文科省とか学術振興会?)の予算が今年度の10%増で通ったらしい。しかもこれはアメリカの科学・技術分野での国際競争力を維持するために今後10年間でNSF予算を倍増する計画*1の第一歩だと。で、国会(下院)でがんばってくれた代議士にみんなでお礼を言いましょう、とのこと。
しかもご丁寧なことに、zip code(郵便番号)を入力したらあなたがお礼を言うべき該当選挙区の代議士とその連絡先、過去の国会における科学関連法案への投票行動などまで一覧にしてくれる web サイトまで用意されている。
Society for Neuroscience | Government Affairs
日本ではあんまり見たことないなあと思う、というのは:
- 自然科学の研究者の集まりである学会が会員に政治的活動を呼びかける
- しかも「感謝の意を伝えよう」なんて呼びかけをする
- そのためのシステムが整備されている(その程度に一般的な行動である)
という点(なお感謝の意というのは珍しいけれど陳情要請自体は数ヶ月に一度は来る)。
感謝の意とはいえみんなで書いたら向こうも迷惑? でも感謝メールの数∝それに結びついた行動をすることで得られる票、ということで、感謝メールをスパムのごとく多数送ることで代議士がこれからも神経科学学会に有利な行動をしてくれる可能性も高くなる、ということか。
学会で元下院議長が講演するとか、アメリカの神経科学学会は日本のそれと比べてもかなり政治家との結びつきを重視しているように見える。科学の生命線が直接的には政府ににぎられている以上*2、お互いの見通しをよくすることは理に適っているように思う。もともとロビー運動が盛んなお国柄ということで日本とは状況も違うのだろうけど、科学と社会の結びつきにこういう形もあるのだな、と、何というかちょっと感心した。
まあ選挙権もない2級市民には直接関係のない話ではあるのだけど。