青背景に黒字


 プレゼンで青背景に黒字を使う人がいるけど見難いのでやめてほしい。視覚の専門家であるはずの人たちがこれをやるのを見るとちょっとドキドキする。


 ヒトの網膜には光電変換を行うための光受容細胞(デジカメにおけるCCD素子みたいなもの。)が並んでいて、

  1. 青に近い波長に感受性を持つ光受容細胞(S錐体細胞)は、錐体細胞全体の5%程度しかない(下図)。
  2. 錐体細胞は最も解像度の高い(光受容細胞が密に並んでいる)網膜中心部には存在しない。
  3. 最大解像度の得られる緑や赤の波長の光が網膜上で焦点を結ぶようにレンズを調整した場合、青波長の光は網膜上で収束しない。つまりぼやける。


 これらのセンサー段階での特性により、黒vs.青などの青い光の有無しか判別の手がかりがない文字や図形は、それ以外の手がかりが使えるもの(黒vs.緑とか、黒vs.水色(緑+青)とか)に比べて著しく見難い。


http://www.cvs.rochester.edu/williamslab/images/home_grcone.jpg http://www.cvs.rochester.edu/williamslab/images/home_rgbcone.jpg
(ヒトの網膜の一部を拡大したもの。丸いもの一つ一つが光受容細胞で、右の図は3種類の光受容細胞をそれぞれ感受性の違いに応じて色で塗り分けたもの。青付近に感受性のある細胞は少ない。図はDavid Williams' Lab @ Rochester Univ.より。論文は Rooda and Williams 1999; Roorda et al. 2001 など)


 同じ理由で白背景(赤+緑+青)に黄色(赤+緑)なども見難い*1というかほとんど見えない。


 一部のチョウやミツバチ、鳥などはヒトとは違う種類の錐体細胞を持っていて、彼らにとってはこれらの識別はヒトより簡単かもしれない。でも、もし今日のプレゼンやブログの主なお客さんがミツバチやカラスさん達ではなくてヒトであるなら、青背景に黒字は避けるという方向で。

*1:同様に赤背景に紫とか水色背景に緑なども見難いけれど、さすがにそういうのはあまり見たことがない。