働き方三様
SfN(神経科学学会)2007で San Diego に行っていた。友人が近くの Scripps という私立の研究所で働いていて、数ヶ月ぶりに会って話をした。元気な様子。
友人夫妻の住む La Jolla という San Diego 近郊の市には Scripps のほかにも UCSD と Salk という著名な大学・研究機関があり、セミナーなどはお互いに行き来して聞けるとの事。でもその3つで科学者の働き方(というかお金の流れ)が相当に違うというのがちょっと面白かったのでメモ。
UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)
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- カリフォルニア大学システムの一つ。
- 科学者の働き方としてはアメリカの一般的な大学に準じる。
- テニュア(終身雇用)制度あり。
- 研究費は政府機関や企業が出すグラント(競争的研究資金)に応募して獲得する。ただし、(生命科学系ではメインとなる)NIH(保健省)グラントの新規採択率は最近では10%を切っていて、結構大変。
- 週に数回の授業を受け持つ限り、年に9か月分の給料は大学から支給される。残りの3か月分はグラントで獲得した資金から補充。グラントが取れなければ3か月分(授業がない期間)は給料なし。
- 医学・生理学系で世界トップクラスの私立研究所。
- Pfizer(世界第2位の製薬会社)からの資金供与を受ける。
- 給料も研究費も Pfizer が出してくれるので、科学者はお金の心配をすることなく研究が出来る。
- ただし、研究は全て Pfizer の意向に沿ったものでなくてはならない。論文は投稿前に Pfizer の内部審査を受ける必要があり、Pfizer に都合の悪いものは発表できない。
こうしてみるとやっぱり大学が一番いいかなあ・・・ Salk はかなり腕に覚えがあってかつ継続的に結果が出せる分野でないとつらそう。まあ実験系なら大学勤務でもグラントを取り続けないといけないのは変わらないのだけど。友人のいるのは Scripps だけど、かなり基礎的な化学が専門なのであまり Pfizer も細かいことは言わないとの事。
アメリカで(日本ではあまり聞かない)非営利・私立の研究所が成り立つのは、企業が税金対策として科学に資金供与(寄付)するというお金の流れがあるかららしい。税金で取られるぐらいなら研究所に寄付したほうが企業イメージも良くなるし研究にも口を出せるし良い事尽くめと。日本も税制が変わればもうちょっと風通しがよくなるだろうか。