今日の雑談
ラボで話していて、DARPA(国防高等研究計画局)からお金をもらうことについてどう思うか、という話になる。国防省のヒモ付き予算。うちのラボは(幸いにも?)これまでのところ DARPA への予算申請をするに至ったことはないのだけど、わりと身近な神経科学研究室でも DARPA からの支援を受けているところが結構あるのは知っている。
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たとえば fMRI 等を用いたある種の脳内情報デコーディングが実現出来たとして(まだしばらく先の話とは思うけど)、拷問かそれに類することをして自白させるのと脳をスキャンして情報を得るのとでは、どちらがより非人間的だろうか?*1 世の中から拷問の数を減らせれば、それは人類の役に立つ科学の使い方だろうか?
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2003年にBCI(脳・コンピュータインターフェース)が話題になったときにもちょっと Nature で DARPA 関連の話題があった。
Neuroengineering: Remote control
(神経工学:リモートコントロール)
Hannah Hoag
Nature 423, 796-798 (19 June 2003)
↑に対する返事↓
Military-funded research is not unethical
(軍事費に支援された研究は非倫理的ではない)
Daniel S. Rizzuto, Boris Breznen & Bradley Greger
Nature 424, 369 (24 July 2003)
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これに関してはオノ・ヨーコがすごい誤解をしているという話もあったけれど、どちらかというと時系列としては BCI が出来て「軍事関係者達は、すぐにこの実験の意味に気が付」いたのではなくて、「軍事関係者」(DARPA)の多大な財政支援があったからこそこれだけ急速に BCI が現実に近づいた、という方が近いのかも。
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元ルームメイトがアカデミアの薄給に耐えかねて企業に行くことにした(ブルータスお前もか!)のだけど、内定をもらった有力候補の一つに軍事系の基礎研究所があるという。今やっている内容に一番近いことをやっているのはそこなので迷っているとか。博士やポスドクの行き先として、軍事産業というのは一定の存在感を持っている。たぶんある種の景気対策や雇用対策として機能している面もあるのだろう。
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今のところ定見なし。なんとなく日本の教育を受けた身として、出来れば軍事系のこととは距離を置いていたいなあ、という気分ではある。
*1:本人の意図に反しているのでどちらも非人間的であるのは確かなのだけど。