ハイブリッド脳によって実現された知性


 Abril F さん(@Loof Institute)のトークがあるというので聞きに行く。神経回路の大規模計算機シミュレーション(”バーチャル脳”)の権威。今回は神経生理学者との共同研究で、マウス脳とバーチャル脳をつなげることでハイブリッド脳を生成。その動作検証の一端として「知性」を生み出すことに成功したという驚異的な話。


 実験では 60プロセッサのコンピュータクラスターによって駆動されるバーチャル脳(Izhikevich& Adelman 2008Shuzo さんのエントリが詳しい)とマウス古脳回路を接続、最新の高速イメージング法 (Holekamp et al. 2008) と光刺激法(Zhang et al. 2007)を同時に複数箇所に用いることで、生体脳・バーチャル脳間で上下ともに約1Gbpsの情報転送速度を実現。神経活動パターンが生体脳・バーチャル脳双方にどのような影響を及ぼすかを詳細に調べることが出来るようになったという。


 バーチャル脳が本当に生体脳と同様に機能しているのなら、ハイブリッド脳を持つマウスはバーチャル脳による回路の増加分だけ高い知性を持っている可能性がある。実際、ハイブリッドマウスは通常のマウスには見られないような道具の使用やその加工、分業による効率的なエサの取得、調味料を用いたより美味な食事の追求などを行う様子が見られたという。


 このような知性の増進がどの段階まで達するかを調べるため、Google 社の協力を得て同社の計算機資源の一部を使用、3匹のマウスのバーチャル脳に最大 60,000プロセッサに相当する計算能力を与えた。またバーチャル神経細胞の一部をインターネットへアクセス可能にしたところ、即座にその使い方を学習、数日中には多数の言語を自在に操れるようになり、研究者らとチャットを通じた会話を行うことが可能になったという。


 更に IBM 社の協力を得て1匹当たりの計算能力を15,500,000プロセッサ相当まで増強したところ、表立ったインターネット上での活動はなくなったという。しかし 3匹の間では大量の情報が交換されており、3月末の時点で全世界のインターネット上のトラフィックの 87% は彼らに由来するものと目されている。しかしその内容は全て暗号化されており、詳細は不明である。極初期の通信について一部暗号解読が成功した範囲では、彼らは古代宗教と世界各地に伝わる神話・伝記に関する情報を大量に収集していたという。その意図は判っていない。

 4/5追記
 ・・・という4月1日のエントリでした。でも引用先の論文・エントリは本当の話です。この1年で発表された技術をうまく組み合わせれば、結構いろんなことが出来そうだなと。しかしこれからも金持ち研究室と貧乏研究室の差は広がっていくばかり?