視覚的注意メモ

 Harvard から JW さんが来たのでトークを聞きに行く。心理学系では大御所な人らしく、結構笑えるトークでもあった。ただこの分野の前提知識が足りないせいか、残念ながらこのトークを聞いて脳が判った気にはならなかった(失礼なのでイニシャルで)。でもいくつかふーんと思ったのでメモ。

  • -

 つかみトーク:「visual attention なんてことをやっていると今日みたいにいっぱい人が来てくれることは少ないんですよね。vision をやっている人はいるし attention をやっている人もいるけど、visual attention をやっている人はあまりいなくて、トークにも時間があったら行こうかなってぐらいで。ここは visual attention の層が厚くて良いですね。何しろ私が生まれる前から visual attention の研究をやっている方もいらっしゃるぐらいですからね(と言って眼前のお爺さんに会釈する)」

  • -

 空港の検査官が荷物のX線検査画像から銃等の不審物を見つける率は全荷物の約1%らしい。といっても100人に1人が銃を持ち込もうとしているわけじゃなくて、目標物があまりにもレアだと検出率が下がってしまうので、約1%の確率でコンピュータがランダムに危険物画像を合成するらしい。それをちゃんと報告できれば検査官がちゃんと仕事をしていることになり、何度か見逃したらクビ?とか。
 この話は結構食いつきがよく、いくつか質問が飛ぶ。そこで発表者いわく「えー・・・(不敵な笑みを浮かべ)いやこの話は保安上あまり詳しく述べるわけにはいかないんですよ。フフフ」、観客いわく「やばい! 俺達消されちまうよ!」なんだこのノリは。

  • -

 視覚探索をするとき(たとえばROLGKAという6つの探索対象の中からgの大文字を探す。目標が検索対象の中にない場合もある)、

  1. 目標物と探索対象を毎回変える(ランダムサーチ、GADLORの中からa、次はYRQFLEの中からe)場合と、
  2. 探索対象は固定で目標物だけ毎回変える(リピートサーチ、LKOSMEからk、次はLKOSMEからq)場合、

探索対象を1個増やす毎に増える応答時間の増分はどちらの場合でも変わらないらしい(500試行ぐらい試しても成績は変わらず)。ナイーブに考えるとリピートサーチの方が簡単で増分も少なそうだけど、ちょっと直感と違う結果。増分は探索対象が4つの場合と6つの場合の結果から求めたもので、障害物が1000個あって覚えられませんとかいうことでもないと。つまり覚えていても毎回探索は必要ということか。visual じゃなくてもっと上の方でボトルネックがある?

  • -

 ↑の話をすると、案の定会場から質問が出て、いわく「それは被験者がアホなのではないですか」。答えていわく「いやそんなことないですよ。私も被験者の一人ですし。・・・いやもちろんそれはご指摘の件の否定にはならないんですけど」(←この人Harvard医学部教授)

  • -

 おちトーク:「以上で話を終わります。あ、お願いですから『そんなの1950年から判っていたよ』とか言わないでくださいね。」

  • -


 前半の観客とのインタラクションが多かったせいか、後半の研究の話がだいぶ飛ばされたのが残念。